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シモン・ゴールドベルク関連の出来事
2013年

ドレスデン・フィルのコンサートマスター、ヘントリッヒ氏 

東京藝大音楽研究センター訪問

 

ヘントリッヒ氏

澤和樹先生と談笑するヘントリッヒ氏

2013年6月、ドレスデン・フィルの日本公演で、コンサートマスターとして、ヴォルフガング・ヘントリッヒ氏Wolfgang Hentrichが来日しました。この時、ゴールドベルクの音楽資料が全て東京藝術大学音楽研究センターに寄贈され、公開に向けて整理・研究中であることを知り、コンサートの合間に音楽研究センターを訪問されたのです。
ヘントリッヒ氏は、ブラームスのヴァイオリン・ソナタやシューベルトの作品など、ゴールドベルクの肉筆の書き込みのある楽譜をご覧になり、その書き込みに合わせて指を動かしたりしながら、「ああ、これこれ!」などと目を輝かせておられました。
部屋の中には、ゴールドベルクの写真パネルが立て掛けてありましたが、ヘントリッヒ氏はそこでお辞儀をして、「シモンに何かを弾いて捧げたいのだけれど、自分はヴァイオリンを持って来なかった」と呟きました。それを、ご挨拶にお見えになっていた学部長の澤和樹先生が聞かれ、ご自分のヴァイオリンを取ってきて下さったのです。ヘントリッヒ氏はシモンの友人だったStefan Frenkelという作曲家の小品を弾いて下さり、ゴールドベルクの写真の前で澤先生とご一緒に写真撮影をしました。

ヘントリッヒ氏

SGの書込がある楽譜を見ながら手を動かすヘントリッヒ氏

その後、いずれこの文庫が正式にオープンする際には、オープニング・セレモニーに澤先生たちとご一緒に室内楽のコンサートを藝大内でしたい、ドレスデン・フィルの次回の日本公演の際などにスケジュールが調整できるとよいのだが、などと話が盛り上がっていました。
ヘントリッヒ氏は、この文庫は音楽家たちにとっての宝庫だから、来日の際にはいつも訪れたいと、この文庫のスタッフの労をねぎらっておられました。

今から90年前、ゴールドベルクが16歳でドレスデン・フィルのコンサートマスターになり、90年を経た現在、同管弦楽団のコンサートマスターのヘントリッヒ氏が、ゴールドベルクの全資料が収まる東京藝大を訪れ、ゴールドベルクの薫陶を受け、現在同大学の学部長である澤和樹先生と共に、この文庫を世界に向けて、音楽の探求の場の一つとして知られるようにしようと、考えを共にする…。 国境を越えて脈々と流れる音楽の世界の歴史を垣間見たような気分になります。

(大木 裕子)